サステナビリティ経営コンサルティングとは何か。選ぶ前に整理したいこと
サステナビリティ経営コンサルティングとは、企業が環境・社会・ガバナンス(ESG)への対応を経営の仕組みとして整えるために、外部の専門家から助言や実務の支援を受けるサービスのことです。温室効果ガス(GHG)排出量の算定、マテリアリティ(重要課題)の特定、情報開示の準備、社内の推進体制づくりなどが、支援の対象になります。
「取引先からCO2排出量の算定を求められた」「何から手を付ければよいかわからず、担当者が一人で抱えている」という中小企業の経営者・総務担当者にとって、気になるのは「サステナビリティ経営のコンサルは何を基準に選ぶのか」ではないでしょうか。この記事では、サステナビリティ コンサルティングを中小企業が選ぶときの基準を、費用・支援範囲・支援スタイル(診断型と伴走型)の3つの軸で整理します。
なお、この記事を掲載している当サイトは、サステナビリティ経営のコンサルティングを提供する株式会社ネクストプレナーズが運営しています。そのため、公的機関の公開情報で確認できた内容と、当社の公開ページに掲載している内容を分けて書き、選び方の基準は特定の会社や方法を勧める目的ではなく、どの会社に相談する場合にも使える形で示します。
コンサルに頼む前に、公的な無料・低額の手段で足りるかを確認する
外部のコンサルティングに頼む前に、公的機関が公開している資料や相談窓口で足りる部分がないかを確認すると、依頼する範囲を絞り込めます。費用をかける部分と、自社で進める部分を分けて考えるためです。
環境省のハンドブックで、自社の進める順番をつかむ
環境省は、これから脱炭素経営の取組をスタートする中小規模事業者を対象に、「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック」を公開しています。環境省の発表によると、取組方法を「知る」「測る」「減らす」の3ステップで解説しており、企業の取組事例を28社分掲載しています(2023年3月6日に改定版を公表)。
コンサルティングを依頼する場合も、この3ステップのどこに自社が困っているのかを先に言葉にしておくと、相談の内容がぶれません。算定の進め方は、取引先からCO2排出量の算定を依頼されたときの手順も参考にしてください。
よろず支援拠点で、経営全体の相談をする
よろず支援拠点とは、国が設置した無料の経営相談所のことです。中小企業・小規模事業者などを対象に、47都道府県に設置されており、相談は何度でも無料と案内されています。ただし、サステナビリティを専門とする窓口とは限りません。「そもそも自社に必要な対応は何か」を経営全体の中で整理する入口として使い、専門的な支援が必要になった段階で、外部のコンサルティングを検討するという順番が考えられます。
省エネ最適化診断で、エネルギー面の改善点を把握する
省エネルギーセンターの省エネ最適化診断は、工場やビルなどのエネルギーの使い方を専門家が見て、改善点を提案する診断サービスです。同センターのサービス案内では、年間エネルギー使用量が100kL未満の事業所向けのクイック診断が9,460円、300kL未満を対象とするベイシック診断(A診断)が12,760円と掲載されています(2026年10月21日に確認。税や説明会費用の扱い、対象の条件、申込件数の上限があるため、最新の内容は公式サイトで確認してください)。
この診断は、CO2排出量の算定や開示の支援を含むものではありません。エネルギー使用の見直しという一部分に絞った、費用を抑えやすい診断型の支援の例と位置づけられます。
サステナビリティ経営のコンサルは何を基準に選ぶのか。4つの比較軸
サステナビリティ経営のコンサルを選ぶ基準は、支援範囲、費用の構造、自走化への支援、担当者の知識の裏付けの4つです。会社の知名度や実績社数だけで決めると、自社の課題と支援内容がずれることがあります。
比較軸1:支援範囲(どこからどこまで任せるか)
支援範囲とは、GHG算定、マテリアリティ特定、開示資料の作成、社内体制づくりのうち、どこまでを外部に任せるかのことです。「算定だけ」「開示だけ」といった一部に特化した支援もあれば、経営戦略との接続まで含めた支援もあります。取引先への回答期限が迫っている場合は算定に絞る、経営の仕組みから整えたい場合は広い範囲を頼むなど、課題に合わせて決めます。
比較軸2:費用の構造(月額か、成果物ごとか、期間はどれくらいか)
費用は金額だけでなく、構造を確認します。毎月の定額なのか、成果物(算定結果・報告書など)ごとの見積もりなのか、契約期間の最低ラインはあるのかによって、総額が変わるためです。見積もりを取るときは、金額に何が含まれるか(面談の回数、資料作成、データ収集の実務、追加相談の扱い)を書面で確認してください。
比較軸3:自走化への支援(終わった後に自社で続けられるか)
GHG算定やマテリアリティの見直しは、毎年続けるものです。支援が終わった後に、自社の担当者が算定表を更新し、取引先の問い合わせに答えられる状態になるかを確認します。具体的には、算定の根拠データや計算方法を共有してもらえるか、担当者向けの説明や研修の時間があるかが判断材料になります。
比較軸4:担当者の知識の裏付け
担当者の知識は、資格や公的な基準への理解で確認する方法があります。環境省は、中小企業等の脱炭素の取組を支える人材の育成を目的に、民間の資格制度を認定する「脱炭素アドバイザー資格制度」を設けています。2023年3月31日に公表された認定ガイドラインに基づき、ベーシック、アドバンスト、シニアアドバイザーの3つの類型があり、シニアアドバイザーはSBT目標設定支援やTCFD開示支援など包括的なコンサルティングを行う役割とされています。
ただし、認定されているのは資格制度であり、資格がないから質が低いと判断できるわけではありません。「担当者がどのような経験と知識を持っているか」「GHGプロトコルなど公的な基準にどう対応するか」を、面談で質問して確認するのが現実的です。
診断型と伴走型の違いは何か
診断型と伴走型の違いは、現状の評価と提案までを行うか、実行の段階まで継続して支援するかにあります。この区分は、支援内容を比べやすくするために本記事で使う整理であり、法律や公的制度で定められた分類ではありません。
診断型:現状を調べて、課題と打ち手を整理する
診断型とは、現状の調査や評価を行い、課題と改善の方向性を報告書や提案としてまとめる支援のことです。期間が比較的短く、費用の見通しが立てやすい傾向があります。次のような場面に向いています。
- 向く場面:自社の現在地がわからず、まず課題の全体像を知りたい
- 向く場面:社内に実務を進める担当者がおり、方向性の助言だけが欲しい
- 注意点:提案を実行する作業は、基本的に自社で行う必要がある
伴走型:実行の段階まで、継続して支援する
伴走型とは、定期的な面談や実務のサポートを通じて、算定、目標設定、開示などの実行を継続して支援する形のことです。一定の期間にわたり関わるため、毎月の費用が発生しやすく、契約期間も長くなります。次のような場面に向いています。
- 向く場面:担当者が一人で、専門知識が社内にない
- 向く場面:算定から開示まで、複数の作業を並行して進める必要がある
- 注意点:期間の終了後に自社で続けられるよう、引き継ぎの計画を契約前に確認する
診断型と伴走型を比べる
2つの違いを、費用・期間・社内の負担の面から比べます。
- 目的:診断型は現状把握と課題整理、伴走型は実行と定着
- 期間:診断型は短期間、伴走型は数か月から半年以上と長め
- 費用の出方:診断型は一括または成果物ごと、伴走型は月額が中心
- 社内の負担:診断型は提案後の実行が自社に残る、伴走型は実務を分担できる
- 向く企業:診断型は社内に推進役がいる企業、伴走型は推進役が不足している企業
どちらが優れているということではなく、診断型で課題を整理してから伴走型に移る、算定だけを診断型で依頼して開示は自社で進めるなど、組み合わせも考えられます。
費用はいくらかかるのか。公開情報で確認できる目安
サステナビリティ経営のコンサルティング費用は、支援範囲と期間で大きく変わるため、一律の金額は示せません。ここでは、公開情報で確認できた2つの例を挙げます。
- 省エネ最適化診断(診断型の例):クイック診断9,460円、ベイシック診断(A診断)12,760円(省エネルギーセンターのサービス案内。税などの扱いは公式サイトで確認)
- 当社のサービス(伴走型の例):アドバイザリーは10万円/月〜、コンサルティングは30万円/月〜(税抜き・目安。当社の公開ページの記載)
当社の公開ページでは、支援期間は3ヶ月〜(状況に応じて調整)、支援スタイルは月1〜2回の対面またはオンライン面談と実務サポートとしています。同じページには、最適なプランは無料相談で提案すると記載しており、実際の費用は企業の規模や課題によって変わります。
比較するときは、月額の安さだけでなく、期間をかけた総額と、成果物・面談回数・実務の範囲を同じ条件にそろえて見積もりを取ることが大切です。
依頼前に確認したい質問リスト
面談や見積もりの段階では、次の質問を使うと、会社ごとの違いが見えやすくなります。
- 私たちの課題(算定・開示・体制づくりなど)のどこまでを、支援の範囲に含みますか
- 費用の内訳と、追加で費用が発生する場合の条件を教えてください
- 契約期間の最低ラインと、途中で見直す場合の扱いを教えてください
- 算定の根拠データや計算方法は、私たちの手元に残りますか
- 支援が終わった後、自社の担当者だけで継続できるようにする計画はありますか
- 担当者の経験や、資格・研修の受講状況を教えてください
- 取引先や金融機関から追加の質問が来た場合、どこまで対応してもらえますか
依頼までの進め方:3つのステップ
依頼までは、次の順番で進めると、費用をかけすぎずに済みます。
- ステップ1:課題を言葉にする。環境省のハンドブックの3ステップ(知る・測る・減らす)のどこで止まっているかを整理し、取引先から求められている内容を書き出す
- ステップ2:公的な手段で足りる部分を確認する。よろず支援拠点や省エネ最適化診断など、無料・低額の窓口で進められる部分を切り分ける
- ステップ3:2〜3社に同じ条件で相談する。ステップ1で整理した課題を共有し、前述の質問リストで回答を比べ、見積もりの条件をそろえて比較する
相談先を増やしすぎると、比較の手間が大きくなります。まずは課題を整理したうえで、2〜3社に絞って相談する方法が現実的です。担当者の負担が大きい中小企業では、中小企業がESG対応で最初にすべき3つのステップも、課題を整理するときの参考になります。
ネクストプレナーズの見解:最初に決めるのは「どこまで自社でやるか」
中小企業がコンサルティングを選ぶときは、会社を比べる前に「どの作業を自社で行い、どの作業を外部に任せるか」を決めることをおすすめします。外部に任せる範囲が曖昧なまま見積もりを取ると、金額の比較ができず、契約後に「思っていた支援と違う」となりやすいと考えます。
よくある誤解は、「コンサルに頼めば、算定から開示まですべて任せられる」というものです。算定に使う電気・ガス・燃料などのデータは、社内の請求書や台帳から集める必要があり、この作業は外部だけでは完結しません。そのため、社内の窓口になる担当者を決めておくことが、費用を抑えて成果を出す前提になると考えます。
よくある質問
サステナビリティ経営のコンサルは、中小企業でも必要ですか?
すべての中小企業に必要というわけではなく、課題と社内の体制によります。社内に推進役がいて、取引先の求めに応じて算定や回答を進められる場合は、公的な資料や無料の相談窓口だけで進められることもあります。専門知識を持つ担当者がいない場合は、外部の支援を検討してください。
診断型と伴走型は、どちらを選べばよいですか?
現状の課題がわからないときは診断型、実行まで進めたいときは伴走型が向いています。社内に推進役がいるかどうかが判断の目安で、診断型で課題を整理してから伴走型に移る方法もあります。
コンサルティングの費用の目安はいくらですか?
支援範囲と期間で変わるため、一律の金額は示せません。公開情報の例では、省エネ最適化診断が9,460円から、当社の伴走型サービスが10万円/月〜(税抜き・目安)です。複数の会社に同じ条件で見積もりを依頼して比べてください。
脱炭素アドバイザーの資格を持つ担当者に頼めば安心ですか?
資格は、知識を判断する材料の一つですが、それだけでは十分ではありません。環境省が認定しているのは民間の資格制度であり、個々の担当者や会社の品質を保証するものではありません。経験や支援の進め方を面談で確認してください。
無料の相談窓口だけで、サステナビリティ経営は進められますか?
入口の整理までは進められますが、算定や開示の実務まで進める場合は、人手と専門知識が必要です。よろず支援拠点は経営全般の相談先で、サステナビリティに特化した窓口とは限りません。実務の支援が必要になった段階で、外部のコンサルティングを検討してください。
支援期間が終わった後は、自社だけで続けられますか?
契約前に、引き継ぎの計画を確認しておけば、続けられる可能性が高まります。算定の根拠データ、計算表、担当者向けの説明が自社に残るかを、見積もりの段階で質問してください。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。