SHK制度とは?中小企業に温対法の報告義務があるかの判断基準と省エネ法との違い

SHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)の報告義務は、会社の規模ではなくエネルギー使用量で決まります。エネルギー起源CO2では、全ての事業所の合計が原油換算で年1,500kl以上なら対象です。対象になる3つの区分、自社で判断する5つのステップ、省エネ法との違い、報告期限と過料までを、環境省の資料と法令にもとづいて中小企業向けに解説します。

SHK制度とは?温対法に基づく排出量の算定・報告・公表制度

SHK制度とは、温室効果ガスを相当程度多く排出する事業者に、自社の排出量を算定して国に報告することを義務づけ、国が報告内容を集計・公表する制度のことです。正式名称は「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」で、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)に基づいています。

取引先から排出量の算定を求められる中小企業が増えるなかで、「自社にもこの制度の報告義務があるのか」と確認したい総務・環境担当者は少なくありません。結論から言うと、対象かどうかは会社の規模(資本金や従業員数)ではなく、エネルギー使用量や排出量で決まります。この記事では、SHK制度の対象になる条件、省エネ法との違い、中小企業が対象かどうかを自社で判断する手順を整理します。

温対法の報告義務は中小企業にもあるのか

中小企業であっても、エネルギー使用量などが基準を超えれば報告義務があります。一方で、基準に達しなければ義務の対象外です。

環境省の制度概要では、エネルギー起源CO2(燃料や電気・熱の使用に伴うCO2)について、全ての事業所のエネルギー使用量の合計が原油換算で年1,500kl以上の事業者が、特定事業所排出者として対象になると示されています。この要件は、資本金や従業員数ではなく、エネルギー使用量だけで示されています。

つまり、中小企業かどうかではなく、「事業者全体のエネルギー使用量が原油換算で1,500klに達するか」が最初の判断軸になります。工場を複数持つ製造業や、多数の店舗を運営する事業者では、事業所ごとの使用量は小さくても、合計すると基準に達することがあります。

SHK制度の対象になる3つの区分

SHK制度の対象者は、環境省の制度概要で、次の3つの区分に整理されています。

  • 特定事業所排出者(エネルギー起源CO2):全ての事業所のエネルギー使用量の合計が原油換算で年1,500kl以上の事業者。省エネ法の特定事業者や特定連鎖化事業者も含まれます。
  • 特定事業所排出者(エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス):温室効果ガスの種類ごとに年間3,000トン(CO2換算)以上を排出し、かつ事業者全体で常時使用する従業員が21人以上の事業者。
  • 特定輸送排出者:省エネ法の貨物輸送事業者、旅客輸送事業者、荷主などが対象です。

多くの中小企業にとって関係するのは、最初の「エネルギー起源CO2」の区分です。2つ目の区分は、エネルギー以外の要因(工業プロセスなど)で温室効果ガスを多く出す事業者向けの要件で、従業員21人以上という条件も加わります。

フランチャイズの本部と加盟店の扱い

連鎖化事業者(いわゆるフランチャイズ本部で、加盟者の排出に関する事項が約款に定められているもの)は、加盟者が設置している事業所の事業活動を本部の事業活動とみなして判定されます。温対法第26条第2項にこの定めがあります。加盟店の立場では、自店の使用量だけで判断するのではなく、本部が報告の対象かどうかも確認してください。

自社が対象かを判断する手順

自社が報告義務の対象かどうかは、次の5つのステップで判断できます。請求書や検針票があれば、特別なシステムがなくても進められます。

ステップ1:「事業者全体」の範囲を決める

判定の単位は、事業所ごとではなく事業者全体です。環境省のQ&Aでは、事業者が設置している全ての事業所のエネルギー使用量を合計して判定するとされています。本社、工場、営業所、倉庫、店舗など、自社が運営する全ての拠点を一覧にします。

「事業所」とは、単一の運営主体のもとで一区画を占めて事務・事業に係る活動が行われ、従事者または設備を有して継続的に活動が行われている場所のことです。

ステップ2:年度のエネルギー使用量を集める

全拠点について、電気、都市ガス、LPガス、灯油、重油、ガソリン、軽油、購入した熱(蒸気・温水など)の年間使用量を集めます。環境省のQ&Aでは、エネルギー起源CO2の算定では燃料・電気・熱の使用が対象で、他人から供給された電気や熱の使用も含まれるとされています。電気を購入しているだけの事業者も、電気の使用量を含める必要があります。

集計期間は年度(4月1日から翌年3月31日まで)です。

ステップ3:原油換算して1,500klと比べる

集めた使用量は、省エネ法の算定方法でエネルギー使用量を求め、原油換算の値(kl)にそろえます。エネルギーの種類ごとの換算係数は、資源エネルギー庁の省エネ法の資料で最新のものを確認してください。換算した合計が年1,500kl未満であれば、エネルギー起源CO2の区分では対象外です。

ステップ4:エネルギー起源CO2以外の排出を確認する

エネルギー以外の要因で温室効果ガスを排出している場合は、温室効果ガスの種類ごとに年間3,000トン(CO2換算)以上かどうか、従業員が21人以上かどうかを確認します。自社の事業にエネルギー以外の排出要因があるかどうかを、まず確認します。

ステップ5:対象と分かったら、報告の準備に入る

対象と判明した場合は、算定方法のマニュアルと排出係数に沿って排出量を算定し、期限までに報告します。対象外と判断できた場合も、算定に使った資料と判断の根拠を社内に保管しておくと、取引先や金融機関に説明するときに役立ちます。

省エネ法との違い

省エネ法とは、エネルギーの使用の合理化(省エネ)と非化石エネルギーへの転換を進めるための法律で、SHK制度とは目的も義務の中身も異なります。ただし、エネルギー起源CO2の対象判定では、どちらも事業者全体で原油換算1,500klという基準が使われるため、両者はよく混同されます。

  • 目的:省エネ法はエネルギーの使用の合理化と非化石エネルギーへの転換を進めるため。SHK制度は排出量を事業者が把握して対策を立て、国が公表して理解を広げるためです。
  • 根拠法:省エネ法は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」。SHK制度は温対法です。
  • 対象の判定:省エネ法の特定事業者は、全ての工場等の年度のエネルギー使用量の合計が政令で定める数値以上の事業者が指定されます(省エネ法第7条)。SHK制度はエネルギー起源CO2では原油換算1,500kl以上で、これに加えて、エネルギー起源以外のガスの要件があります。
  • 事業者に課される主な義務:省エネ法の特定事業者は、エネルギー管理統括者の選任、中長期計画の提出、定期報告が必要です(第8条、第15条、第16条)。SHK制度は排出量の算定と国への報告が中心です。
  • 公表:SHK制度では、報告内容が国によって集計・公表されます。

省エネ法の特定事業者に指定されている場合は、温対法の特定事業所排出者にも当たります。環境省のQ&Aでは、エネルギー起源CO2の排出量については、省エネ法の定期報告書を従来どおり提出すれば温対法上の報告とみなされ、別々に提出する必要はないとされています。省エネ法の定期報告に慣れている事業者は、その延長で温対法の報告も済ませられます。

報告期限・報告方法・罰則・公表の仕組み

報告はいつまでに、どう行うのか

特定事業所排出者は、毎年度7月末日までに報告します。特定輸送排出者の期限は6月末日です。報告は、電子報告システム(省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム「EEGS」)または定期報告書で行います。

報告しないとどうなるのか

温対法では、報告をせず、または虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処するとされています(第75条)。罰則の金額は小さく見えますが、制度の報告は公表と結びついているため、報告漏れは取引先や金融機関からの信頼にも関わります。

報告した内容はどう公表されるのか

令和3年5月の温対法改正により、令和3年度の実績以降は、開示請求の手続きを経ずに排出量の情報が公表されるようになりました。令和3年度以降の集計結果は、EEGSの公表画面で確認できます。対象になる場合は、自社の排出量が社外から見られることを前提に、算定の根拠を整えておく必要があります。なお、公表によって権利利益が害されるおそれがあると考える特定排出者は、法に定める手続きで、事業所ごとの値ではなく合計量での通知を請求できる仕組みもあります(第27条)。

制度の対象外でも、排出量の算定が求められる場面

SHK制度の対象外でも、取引先から排出量の提出を求められることがあります。これは法的な報告義務とは別の話で、取引先が自社のサプライチェーン全体の排出量を把握するために、協力を依頼するものです。

この場合は、法律上の期限や様式はなく、取引先が指定する形式で回答するのが一般的です。まず「何の排出量を、どの範囲で、いつまでに求められているのか」を確認します。具体的な進め方は、取引先からCO2排出量の算定を依頼されたときの手順で解説しています。電気や燃料の使用量から排出量を計算する方法は、CO2排出量の計算方法と排出係数の選び方、スコープ1・2・3の違いは、スコープ1・2・3の違いと算定の進め方をご覧ください。

ネクストプレナーズの見解

中小企業の実務では、まず「SHK制度の対象か」を事業者全体の年間エネルギー使用量で確認し、結果を社内で記録しておくことをおすすめします。対象外と判明すれば、法律上の報告義務を気にして手が止まることはなくなり、取引先への回答に集中できるためです。よくある誤解は、「温対法の対象外だから、排出量の算定は不要」という考え方です。法律上の義務がなくても、取引先や金融機関から算定を求められる場面は増えていると考えます。複数の拠点を持つ会社は、拠点ごとの使用量だけで判断せず、合計で確認することをおすすめします。

よくある質問

温対法の報告義務は、中小企業にもありますか?

中小企業でも、基準を超えれば報告義務があります。判定の基準は、会社の規模ではなく、エネルギー使用量などです。エネルギー起源CO2では、全ての事業所のエネルギー使用量の合計が原油換算で年1,500kl以上の事業者が対象になります。

従業員が少ない会社は、対象外になりますか?

従業員数だけでは判断できません。環境省の制度概要では、エネルギー起源CO2の要件はエネルギー使用量で示されており、従業員数は要件に挙げられていません。従業員が21人以上という条件があるのは、エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの区分です。

省エネ法の定期報告をしていれば、温対法の報告は別に必要ですか?

エネルギー起源CO2だけであれば、別の報告は必要ありません。環境省のQ&Aでは、省エネ法の定期報告書を提出すれば、温対法上の報告とみなされるとされています。エネルギー起源CO2以外のガスの報告が必要な場合は、別途の対応が必要です。

事業所が複数あるときは、事業所ごとに判定しますか?

エネルギー起源CO2では、事業者全体で判定します。環境省のQ&Aでは、事業者が設置している全ての事業所の年間エネルギー使用量の合計が原油換算で1,500kl以上かどうかで判断するとされています。1つの事業所が小さくても、合計で基準を超えれば対象になります。

報告をしないと、どうなりますか?

20万円以下の過料の対象になります。温対法では、報告義務があるのに報告をしない場合や、虚偽の報告をした場合に過料が科されると定められています。

SHK制度の対象外ですが、取引先から排出量を聞かれています。どうすればよいですか?

取引先の依頼に沿って、算定した排出量を提出します。法律上の義務ではありませんが、まず依頼の範囲と期限を確認し、電気・燃料の使用量から排出量を算定する準備を進めます。算定や回答の進め方に迷う場合は、ネクストプレナーズのサステナビリティ支援にご相談ください。

監修

仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長

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