SDGsとサステナビリティ経営の違い|中小企業はどちらから始めるか、使い分けと進め方の順序

SDGsは世界共通の目標、サステナビリティ経営はその目標も踏まえて自社の経営にESGの課題を組み込む進め方です。中小企業が着手する順序は、取引先や金融機関から具体的な依頼が来ているかで決めると迷いません。この記事では、国連広報センター・環境省・東京都の公開資料に基づき、両者の定義と違い、使い分けの判断基準、最初の1年の進め方、よくある誤解を、経営者向けに整理します。

SDGsとサステナビリティ経営の違いは「目標」と「進め方」の違い

SDGsとサステナビリティ経営の違いは、SDGsが世界共通の「目標」であるのに対し、サステナビリティ経営は、その目標も踏まえて、自社が長く事業を続けるために環境・社会・企業統治(ESG)の課題を経営に組み込む「進め方」である点にあります。中小企業がどちらから始めるかは、取引先や金融機関から具体的な依頼が来ているかどうかで決めると、迷いにくくなります。

この記事では、「SDGs サステナビリティ経営 違い 中小企業」で調べている経営者向けに、両者の定義、違い、使い分け、着手する順序を整理します。用語や制度の説明は、国連広報センター、環境省、東京都の公開資料で確認できた内容に限っています。一方、「どちらから始めるか」の判断基準は、ネクストプレナーズの考え方(見解)であり、法令や公的機関が定めた手順ではありません。

SDGsとは?17のゴールと169のターゲットからなる国際目標

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年を年限とする国際目標(持続可能な開発目標)のことです。

国連広報センターの説明によると、2015年9月25〜27日にニューヨークの国連本部で開かれた「国連持続可能な開発サミット」で、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。このアジェンダには、17の目標と169のターゲットからなるSDGsが含まれており、2015年から2030年までの15年間で達成を目指すとされています。

ここで押さえておきたいのは、SDGsが「個々の会社の経営手法」ではなく、国際社会が共有する目標だという点です。そのため、SDGsのゴールを眺めるだけでは、自社が何を測り、何を公表し、どの順番で動けばよいのかまでは分かりません。

企業向けには、環境省が「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(第2版)」を2020年3月に発行しています。環境省の案内では、SDGsについてこれまで特段の取組を行っていない、あるいは関心を持って取組を始めてみようと考えている企業を想定し、特に中小規模の企業・事業者の活用を目的としています。本編では、SDGsに取り組む意義や具体的な取組方法が示されています。

サステナビリティ経営とは?ESGとの関係

サステナビリティ経営とは、環境(E)・社会(S)・企業統治(G)に関する課題を事業の意思決定に組み込み、長く事業を続けられる状態をつくる経営のことです。この言葉は資料によって含める範囲が異なることがあるため、この記事ではこの意味で使います。

サステナビリティ経営を理解するには、ESGとの関係を押さえると整理しやすくなります。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を組み合わせた言葉です。環境省の解説では、ESGの考え方は2006年の国連責任投資原則(PRI)により提唱されたと説明されています。

東京都の「東京サステナブルNavi」では、ESGを「環境、社会、ガバナンスを考慮した投資活動や経営・事業活動」としたうえで、SDGsを世界共通のゴール、ESGをそのゴールを実現するための手段と位置づけています。さらに、ESGは世界の潮流になっており、今後、取引先や金融機関からの要請が強まるとの見方も示されています。

3つの言葉の関係は、次のように整理できます(この整理は、上記の公開資料をもとにした本記事のものです)。

  • SDGs:国際社会が掲げる、2030年までの共通の目標。
  • ESG:環境・社会・企業統治の3つの視点。投資や経営・事業活動で、課題を見るときの切り口。
  • サステナビリティ経営:ESGの視点で自社の課題を洗い出し、算定・目標設定・開示まで実行する経営の進め方。

SDGsとサステナビリティ経営の違いを5つの観点で比べる

2つの違いは、位置づけ、問いの形、数値の扱い、取引先への回答、始めやすさの5つの観点で比べると分かりやすくなります。

  • 位置づけ:SDGsは国際社会共通の目標です。サステナビリティ経営は、自社の経営の中でその課題に取り組む進め方です。
  • 問いの形:SDGsでは「社会のどの課題に、自社の事業はどう関われるか」を考えます。サステナビリティ経営では「自社の排出量や人材、統治の現状はどうか、何をいつまでに改善するか」を考えます。
  • 数値の扱い:SDGsのゴールは国際目標であり、自社の排出量の算定方法を定めるものではありません。CO2排出量などは、サステナビリティ経営の実務として自社で算定します。
  • 取引先・金融機関への回答:東京都の資料では、取引先や金融機関からの要請はESGの文脈で説明されています。排出量や方針の具体的な回答は、サステナビリティ経営の実務で用意することになります。
  • 始めやすさ:SDGsは、考え方を学んで自社の関わるゴールを選ぶところから始められます。サステナビリティ経営は、担当者、データ、予算が必要になるため、入口より実行に手間がかかると考えます。

つまり、両者は対立する選択肢ではなく、「ゴールを決める視点」と「実行する仕組み」という役割の違いがあります。

中小企業はSDGsとサステナビリティ経営のどちらから始めるべきか

先に取り組むべきものは、取引先や金融機関から具体的な依頼が来ているかどうかで決めるのが分かりやすいと考えます。依頼が来ているならサステナビリティ経営の実務(算定)から、まだ来ていないならSDGsで自社の関わるゴールを整理してから、というのがネクストプレナーズの考え方です。

ケース1:取引先からCO2排出量の算定やESGのアンケートが届いている

この場合は、回答期限があるため、サステナビリティ経営の実務、特に排出量の算定から始めることをおすすめします。SDGsのゴールを整理する作業は、算定の後でも間に合います。依頼を受けたときの確認事項と回答の手順は、取引先からCO2排出量の算定を依頼されたらで解説しています。

ケース2:具体的な依頼はなく、方針づくりや採用・発信を考えている

この場合は、SDGsの17のゴールから、自社の事業と関わりの深いものを選ぶところから始められます。環境省のSDGs活用ガイドは、特に中小規模の企業・事業者を対象に、取り組む意義や取組方法を示しているため、最初の資料として使えます。ただし、ゴールを選んだだけで終わらせず、次の段階で「測る」ことに進むことが重要です。

ケース3:どちらから始めるか決めきれない

この場合は、まず現在地を知ることから始めるのが現実的です。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームには、7つの質問に答えると現在のレベルと次のアクションが分かる「脱炭素経営レベル診断」があります。結果を踏まえて、経営者と推進担当者で「今期は算定まで」「今期はゴールの選定まで」のように範囲を決めると、無理なく進められます。

SDGsを入口に、サステナビリティ経営へつなげる5つのステップ

中小企業が両方に取り組むときの順序は、「目的を決める→現状を知る→測る→重要課題と目標を決める→開示する」の5ステップが基本になります。次の順序は、ネクストプレナーズが支援を設計する際の目安であり、法令で定められたものではありません。

  1. ステップ1:目的を決める。SDGsの17のゴールから、自社の事業と関わりの深いものを2〜3つ選び、「何のために取り組むか」を経営者の言葉で整理します。
  2. ステップ2:現状を知る。取引先や金融機関からの要請、すでに取り組んでいること、担当者を書き出します。環境省の脱炭素経営レベル診断も使えます。
  3. ステップ3:測る。請求書などの使用量から、まず自社の直接排出と電気の使用に伴う排出(スコープ1・2)を算定します。環境省のプラットフォームは、脱炭素経営を「知る・測る・減らす」の3段階で案内しています。順番の考え方は、スコープ1・2・3の違いと中小企業が優先すべき算定の進め方で解説しています。
  4. ステップ4:重要課題と目標を決める。自社にとって重要な課題(マテリアリティ)を絞り、削減目標などを置きます。マテリアリティは一度決めて終わりではなく、事業環境の変化に合わせて見直します。手順は、マテリアリティ特定とは何か?中小企業が取り組む際の実務的な手順にまとめています。
  5. ステップ5:開示する。Webサイトなどで、取組と数値を公表します。このとき、ステップ1で選んだSDGsのゴールと、自社の取組の対応を示すと、読み手に意図が伝わりやすくなります。載せる項目は、サステナビリティ報告書・統合報告書の作り方と中小企業が最低限押さえるべき開示項目で解説しています。

月単位のスケジュールに落とし込みたい場合は、サステナビリティ経営の進め方|中小企業が最初の1年で取り組む手順と月別スケジュールを参照してください。ESG対応の最初の3つの行動は、中小企業がESG対応で最初にすべき3つのステップにまとめています。

SDGsとサステナビリティ経営でよくある3つの誤解

誤解1:17のゴールすべてに取り組まなければならない

17のゴールのすべてに同時に取り組むことが前提とされているわけではありません。環境省の「SDGs活用ガイド(第2版)」は、環境保全に関連する9つのゴール(4、6、7、11、12、13、14、15、17)を中心に取り上げています。自社の事業と関わりの深いゴールに絞って考える進め方もあります。

誤解2:SDGsのバッジやロゴを掲げれば、サステナビリティ経営になる

バッジやロゴを掲げることは、取組を発信する手段の1つにすぎません。取引先や金融機関が求めるのは、排出量などの数値や、方針、体制といった中身だと考えます。ゴールを掲げるだけで終わらず、算定・目標設定・開示まで進めることをおすすめします。

誤解3:ESGやサステナビリティ経営は大企業のもの

東京都の資料では、ESGは取引先や金融機関からの要請という形で、中小企業の経営にも関わるものとして説明されています。会社の規模を問わず、取引先や金融機関から問われる可能性があります。まず、自社がどこから何を求められているかを確認することが出発点です。

ネクストプレナーズの見解

中小企業にとって、SDGsとサステナビリティ経営のどちらが正しいかという問いは、あまり重要ではないと考えます。大切なのは、取引先や金融機関から求められていることに、まず期限内に答えられる状態をつくり、そのうえで自社が重視するゴールを決めて継続することです。担当者が1人か兼任であることが多いため、最初から全項目を網羅しようとせず、算定の範囲と開示の範囲を絞って1年を完走することをおすすめします。

SDGsを入口にした進め方のご相談はネクストプレナーズのSDGs導入支援、算定や開示を含めたサステナビリティ経営のご相談はネクストプレナーズのサステナビリティ支援をご覧ください。

よくある質問

SDGsとサステナビリティ経営はどう違いますか?

SDGsは国際社会共通の目標で、サステナビリティ経営は、ESGの課題を自社の経営に組み込んで実行する進め方です。SDGsは2015年9月に国連サミットで採択された、2030年を年限とする目標です。サステナビリティ経営は、算定・目標設定・開示など、会社ごとの実務を含みます。

中小企業は、SDGsとサステナビリティ経営のどちらから始めるべきですか?

取引先や金融機関から具体的な依頼が来ているなら、サステナビリティ経営の実務(排出量の算定)から始めることをおすすめします。依頼がまだなければ、SDGsで自社の関わるゴールを選んでから、算定へ進む順序が取り組みやすいと考えます。これはネクストプレナーズの考え方であり、法令で定められた順序ではありません。

ESGとサステナビリティ経営は同じ意味ですか?

厳密には同じではありません。ESGは環境・社会・企業統治という3つの視点を指す言葉で、サステナビリティ経営は、その視点を使って自社の課題に取り組む経営の進め方を指すと整理できます。ただし、資料によって使われ方に幅があるため、読むときは定義を確認してください。

SDGsの17のゴールすべてに取り組む必要がありますか?

すべてに同時に取り組むことが前提とされているわけではありません。環境省のSDGs活用ガイド(第2版)は、環境保全に関連する9つのゴールを中心に取り上げています。自社の事業と関わりの深いゴールから選ぶ進め方もあります。

中小企業向けの公的な資料はありますか?

あります。環境省の「SDGs活用ガイド(第2版)」は、特に中小規模の企業・事業者を対象にしています。また、環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、脱炭素経営の情報や、7つの質問に答える脱炭素経営レベル診断が案内されています。

SDGsとサステナビリティ経営の両方に取り組む余裕がない場合はどうすればよいですか?

まず、今期に取り組む範囲を1つに絞ることをおすすめします。たとえば「取引先から求められているスコープ1・2の算定まで」「自社が関わるゴールの選定まで」のように、範囲を区切ります。進め方に迷う場合は、ネクストプレナーズのサステナビリティ支援にご相談ください。

監修

仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長

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