東京サステナブルワーク企業とは?制度の定義と位置づけ
東京サステナブルワーク企業とは、東京都が「東京の未来の働き方推進事業」の中で、多様で柔軟な働き方の実現に向けた取組が一定の基準を満たした都内の企業を登録する制度のことです。登録された企業は、達成度に応じて「みらワカプラス」または「みらワカ」のどちらかの登録マークを使えます。
名前に「サステナブル」と入っていますが、この制度が見ているのは主に「働き方」です。GHG(温室効果ガス)の算定や脱炭素といった環境面の取組を認定する制度ではないため、サステナビリティ担当者が最初に押さえておきたい点として、ESGの「E(環境)」ではなく「S(社会)」に近い制度と整理しておくと混乱しません。
本記事は、東京都の事業サイトに掲載されている内容(2026年10月19日確認)に基づき、対象企業、登録基準、申請の流れ、メリット、注意点を中小企業のサステナビリティ担当者向けに整理したものです。基準や申請期間は年度ごとに見直される可能性があるため、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。
対象企業の条件は?東京都内の従業員2人以上300人以下
対象は、本店所在地が東京都内にあり、常時雇用する従業員が2人以上300人以下の企業、一般社団法人、一般財団法人等です。東京都の事業サイトでは、都内で事業を営む企業等が対象であることと、従業員数の範囲が示されています。
従業員が300人を超える企業や、本店が都外にある企業は、この制度の登録対象にはなりません。支店や事業所が東京都内にあるだけでは足りない点にも注意が必要です。自社が対象かどうかは、本店所在地と従業員数の2点を最初に確認してください。
なお、従業員数は常時雇用する人数が基準です。数え方の詳細は、公式サイトで公開されている実施要綱や募集要項で確認してください。
登録基準は?「みらワカ」と「みらワカプラス」の違い
登録基準は、必須項目2個と選択項目8個の合計10項目で構成され、満たした項目の数と労働時間の水準によって「みらワカ」と「みらワカプラス」に分かれます。どちらも、まず2つの必須項目を満たすことが前提です。
必須項目:取組宣言の公表と労働時間
必須項目の1つ目は、「未来の働き方取組宣言」を自社のホームページ等で公表していることです。宣言のひな形は、申請に使うマイページからダウンロードできます。
2つ目は、全正社員の前事業年度における1人平均の月間総実労働時間が、基準以下であることです。基準は「みらワカ」で180時間以下、「みらワカプラス」で170時間以下とされています。
選択項目:8項目のうち何個満たすか
選択項目は、次の8項目です。公式サイトの記載をもとに整理しています。
- 休暇取得:前事業年度の年次有給休暇の平均取得率が75%以上である
- 転勤制度:転勤に伴う社内公募制度や特別手当制度等を整備している
- 柔軟な働き方:柔軟な働き方を選択できるような制度を整備している
- テレワーク:テレワーク規定を整備している
- 副業・兼業:副業・兼業制度を整備している
- 賃金・処遇:職務記述書等により、職務や役割に応じた報酬を定めている
- 就業環境:前事業年度の離職率が10%未満である
- 高齢者就業:高齢者就業確保措置制度(70歳まで)を整備している
みらワカは選択項目のうち4個または5個、みらワカプラスは6個以上に該当することが登録の目安として示されています。
みらワカとみらワカプラスの比較表
| 項目 | みらワカ | みらワカプラス |
|---|---|---|
| 必須項目 | 取組宣言の公表/月間総実労働時間180時間以下 | 取組宣言の公表/月間総実労働時間170時間以下 |
| 選択項目(8項目中) | 4個または5個に該当 | 6個以上に該当 |
| 登録マーク | 色・デザインが異なる | 色・デザインが異なる |
両者は10項目の達成度合いに応じた2つのランクで、ロゴマークの色とデザインが異なります。みらワカで登録した後にみらワカプラスへ再申請することも可能ですが、その場合はマイページからではなく、事務局への電話またはメールでの連絡が必要です。
申請の流れは?登録までの4ステップ
申請はオンラインのみで、マイページの登録から登録証の発行まで4つのステップで進みます。電話や書面での申込は受け付けられていません。
- ステップ1:マイページ登録フォームで基本情報を入力する
- ステップ2:「未来の働き方取組宣言」をマイページからダウンロードし、自社サイトで公表する
- ステップ3:マイページの「登録申請フォーム」から申請する。実施している取組の記入、就業規則・規定等のアップロード、宣言を公表している状況の写真等のアップロード、会社プロフィール(200字以内)の記入を行う
- ステップ4:事務局の確認後、登録が決定し、登録証(PDF)が発行される
提出書類のうち、就業規則等の提出は必須です。確認できる書類がない取組は、選択項目として数えられません。制度を「整備している」と回答する項目ほど、就業規則や社内規程に明文化されているかを事前に点検しておく必要があります。
申請期間と所要期間の目安
2026年度の申請期間は、2026年4月28日から2027年1月25日までです。申請から登録証の発行までは、半月から1か月半程度が目安とされており、毎月25日までに申請すると翌月中旬頃の発行が目安です。
たとえば、2026年12月26日から2027年1月25日の申請分は、2027年2月中旬頃の登録証発行が予定されています。2027年1月25日が最終の申請日となっているため、駆け込みで就業規則の改定が間に合わない事態にならないよう、早めの準備が必要です。
登録の有効期間と費用は?
登録の有効期間は、登録決定日から起算して3年に達する日の年度末までです。たとえば令和6年度に登録した場合の期限は、令和10年3月31日までと案内されています。
費用は、事業への参加がすべて無料とされています。登録申請や専門家派遣などの支援に、企業側の費用負担はかからないことになっています。ただし、基準を満たすために就業規則を改定したり、制度を整備したりする場合は、社内の工数や専門家への相談費用が別途かかる可能性があります。
登録するとどんなメリットがある?
登録のメリットとして、東京都の事業サイトでは、採用や社内外へのPR、中小企業制度融資の利用、入札での加点、専門家派遣などが挙げられています。主なものを整理します。
- 登録マークの活用:登録証と登録マークを、採用活動や社内のエンゲージメント向上、対外的なPRに使える
- 中小企業制度融資:働き方改革支援メニューを利用できる(融資の条件は都の最新の要項で確認が必要)
- 入札での加点:東京都産業労働局の入札(総合評価方式)で加点の対象となる
- 専門家派遣:サステナブルワーク導入アシスタントの派遣が2回まで無料
- DXエキスパート派遣:DX推進企業向けの派遣が2回まで無料
- 表彰への応募:「Tokyo Future Work Award」の表彰の対象になる
なお、専門家派遣はワークライフバランスの領域で登録申請をサポートするもので、DXアドバイザーはDX・IT領域でAward応募をサポートするものと整理されています。専門家派遣は、登録前であってもマイページを登録すれば申し込めます。
メリットの大きさは、自社の状況によって変わります。入札に参加していない企業にとって加点はあまり意味を持ちませんし、すでに採用に困っていない企業にとってマークの効果は限定的かもしれません。何のために取得するのかを先に決めることが大切です。
ネクストプレナーズの見解:サステナビリティ担当者はどう使い分けるか
私たちは、この制度を「ESG対応の中の、人と働き方に関する取組を外に示すための1つの手段」として位置づけるのがよいと考えます。サステナビリティ経営では、環境面の取組(GHG算定など)と社会面の取組(働き方・人材)の両方が問われますが、中小企業では環境面に比べて、社会面の取組を第三者の枠組みで見える化する手段が少ないのが実情です。
よくある誤解は、「サステナブル」という名前から、脱炭素や環境配慮の認証だと受け取ってしまうことです。取引先から環境面の取組を求められている場合、この制度の登録だけでは代わりにならないと考えられます。環境面はGHG算定やエコアクション21など別の取組で対応し、働き方の整備はこの制度で示す、というように役割を分けて考えることをおすすめします。
優先順位としては、まず自社の就業規則と実際の運用が、選択項目の基準に合っているかを棚卸しすることから始めるのが現実的です。基準を満たす項目が多ければ申請の負担は小さく、足りない項目が多ければ、制度を整備すること自体が社内の働き方改善の機会になります。
申請前に確認したい注意点
申請を検討する際は、次の点を事前に確認しておくとスムーズです。
- 本店所在地が東京都内か、常時雇用する従業員が2人以上300人以下かを確認する
- 前事業年度の1人平均月間総実労働時間(全正社員)を集計し、180時間以下(みらワカプラスは170時間以下)かを確認する
- 年次有給休暇の平均取得率と離職率を、前事業年度の実績で算出しておく
- テレワーク規定や副業・兼業制度などが、就業規則や社内規程に明文化されているかを確認する
- 取組宣言を公表する自社サイトのページを用意しておく
数値の算出方法や、従業員数の数え方の詳細は、実施要綱・募集要項・登録基準確認シートに定められています。判断に迷う場合は、東京都産業労働局 雇用就業部 労働環境課の働き方改革推進担当に問い合わせることができます。
企業のサステナビリティ全体の進め方を整理したい場合は、中小企業がESG対応で最初にすべき3つのステップも参考にしてください。環境面の取組については、エコアクション21とは?ISO14001との違い・費用・取得の流れで整理しています。
よくある質問
東京サステナブルワーク企業の登録に費用はかかりますか?
登録そのものに費用はかかりません。東京都の事業サイトでは、事業の取組への参加はすべて無料と案内されています。ただし、基準を満たすための社内の制度整備には、別途工数や費用が発生する場合があります。
従業員が300人を超えていても申請できますか?
申請できません。対象は、本店が東京都内にあり、常時雇用する従業員が2人以上300人以下の企業、一般社団法人、一般財団法人等です。
みらワカとみらワカプラスは何が違いますか?
登録基準の達成度合いが違います。みらワカは月間総実労働時間180時間以下で選択項目4個または5個、みらワカプラスは170時間以下で選択項目6個以上が基準です。登録マークの色とデザインも異なります。
登録証の有効期間はどのくらいですか?
登録決定日から起算して3年に達する日の年度末までです。たとえば令和6年度登録の場合は、令和10年3月31日までと案内されています。
申請から登録証が届くまでどのくらいかかりますか?
半月から1か月半程度が目安です。毎月25日までに申請すると、翌月中旬頃の発行が目安とされています。
この制度はGHG算定や脱炭素の取組の代わりになりますか?
代わりにはなりません。この制度は主に働き方に関する取組を対象としており、GHG排出量の算定や削減といった環境面の取組を認定するものではありません。取引先から環境面の対応を求められている場合は、別の取組で対応する必要があります。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。