SSBJ基準とは?中小企業の担当者が最初に知っておきたい基本
SSBJ基準とは、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が公表した、日本のサステナビリティ開示基準のことです。気候変動をはじめとするサステナビリティ関連の情報を、投資家に向けてどのような項目・方法で開示するかを定めています。
SSBJは最初の基準として、次の3つを公表しています。
- サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」
- サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」
- サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」
SSBJの公式サイトによると、これらは「ISSBのIFRSサステナビリティ開示基準との整合性を図ること」を基礎として開発されました。公表は2025年3月5日で、2026年3月13日に改正されています。基準は改正されることがあるため、実際に対応する際は、SSBJと金融庁が公表している最新版を確認してください。
制度の面では、金融庁が2026年2月20日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」などの改正を公布しました。あわせて、SSBJ基準が、サステナビリティ情報の作成・開示で用いる基準として告示で指定されています。
SSBJ基準はいつから義務になるのか?適用時期を整理
SSBJ基準の適用は、上場会社の平均時価総額の区分に応じた段階適用です。最初に適用されるのは、平均時価総額3兆円以上のプライム市場上場会社で、2027年3月期(令和9年3月31日以後に終了する事業年度)の有価証券報告書からです。
金融庁の公表資料にもとづく区分は、次のとおりです。
| 区分(平均時価総額) | 適用開始の時期 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 3兆円以上 | 2027年3月期(令和9年3月31日以後に終了する事業年度) | 内閣府令の改正で定められた |
| 3兆円未満1兆円以上 | 2028年3月期(令和10年3月31日以後に終了する事業年度) | 内閣府令の改正で定められた |
| 1兆円未満5,000億円以上 | 2029年3月期を軸とする案が、ワーキング・グループで検討された | 今回の内閣府令改正の対象(1兆円以上)には含まれていない |
対象となるのは、東京証券取引所プライム市場の上場会社です。平均時価総額は、有価証券報告書の対象事業年度の前事業年度末と、その前4事業年度末の時価総額を平均して判定します。
1兆円未満5,000億円以上の区分はどう扱われているか
1兆円未満5,000億円以上の区分は、結論から言うと、2026年2月公布の内閣府令改正の対象には含まれていません。金融審議会のワーキング・グループ(第9回、2025年10月30日)では、事務局が「2029年3月期からSSBJ基準の適用を開始することとしてはどうか」と提案し、複数の委員が賛同しました。その後、ワーキング・グループの報告が2026年1月8日に公表されています。この区分の最新の取扱いは、金融庁の公表資料で確認してください。
適用初年度とその翌年度の「二段階開示」とは
二段階開示とは、適用開始年度とその翌年度に限り、有価証券報告書にサステナビリティ情報を記載せず、翌期の半期報告書の提出期限までに訂正報告書で提出できるしくみのことです。上場会社の準備期間を確保するための経過措置です。上場会社側の開示が後ろにずれても、社内でのデータ集計は事業年度の途中から進むことになります。
SSBJ基準は中小企業にも影響するのか?
中小企業が直接の適用対象になるとは、金融庁の公表資料では示されていません。ただし、取引先である上場会社から、温室効果ガス排出量などのデータ提供を求められる可能性があります。
理由は、上場会社が開示する温室効果ガス排出量に、スコープ3(自社の事業活動に関連する他社の排出量)が含まれるためです。金融庁は、有価証券報告書に記載するスコープ3の温室効果ガス排出量の定量情報について、差異が生じる要因や推論過程などが合理的な範囲で具体的に記載されている場合は、虚偽記載の責任を負わないという考え方を示しています。つまり、スコープ3は実測どおりの精度でなくても、算定の前提を説明することが前提になっています。
環境省の「Q&A」では、供給先から排出量情報を求められた事業者のスコープ1・2の排出量(およびスコープ3上流の排出量)は、情報を求めた事業者のスコープ3カテゴリ1に該当すると説明されています。取引先の上場会社が自社のスコープ3を算定する際に、中小企業の排出量データが材料になるということです。
データの集め方や回答の流れは、取引先からCO2排出量の算定を依頼されたら?中小企業が最初に確認することと回答までの手順で詳しく整理しています。スコープ1・2・3の区分があいまいな場合は、スコープ1・2・3の違いと中小企業が優先すべきGHG算定の進め方もあわせてご覧ください。
取引先からデータ提供を求められたら?備えの4ステップ
取引先から依頼が来る前に、次の4ステップで準備しておくと、依頼を受けた際に落ち着いて対応できます。
- ステップ1:依頼の中身を確認する。何のための依頼か、対象期間、回答の形式(組織単位か製品単位か)、提出期限を確認します。
- ステップ2:自社のスコープ1・2に使うデータの所在を把握する。電気・ガス・燃料の請求書や検針票など、どの部署が何を持っているかを一覧にします。
- ステップ3:算定の前提と根拠資料を残す。どの排出係数を使ったか、どの期間の数字かを記録しておきます。
- ステップ4:回答窓口を決める。問い合わせが来たときに、誰が確認し、誰が回答するかを決めておきます。
ステップ3は、上場会社側が算定の前提や推論過程を説明する必要があることから、重要になると考えられます。中小企業側の資料が整っていれば、取引先の担当者も内容を確認しやすくなります。
環境省は、実測値である1次データを活用した排出量算定に関するガイドを公表しています。取引先から削減の取り組みを反映した算定を求められる場合に、参考になります。
備えのチェック項目
- 直近1年分の電気・ガス・燃料の請求書を、月ごとにそろえられるか
- 算定に使った排出係数と、その出典を記録しているか
- 取引先からの依頼を受け付ける窓口と、回答の承認者が決まっているか
- 自社の拠点・車両・設備のうち、算定の対象範囲を説明できるか
第三者保証とはどのような関係があるのか?
第三者保証とは、開示された情報の信頼性について、独立した第三者が確認する業務のことです。ワーキング・グループ第11回で示された報告書案では、当面の保証の範囲を、ガバナンス、リスク管理、スコープ1・2に限定することが適当とされています。
ワーキング・グループ第9回の事務局資料では、スコープ3など義務的な保証の対象に含まれない情報や、義務化の対象ではない企業が保証を受けることを「任意保証」と呼んでいます。保証の導入時期や詳細は検討が続いているため、最新の金融庁の資料で確認してください。
中小企業に直接の保証が求められるわけではありませんが、取引先が保証を受ける場合に備えて、スコープ1・2の根拠資料を整理しておくと、問い合わせに答えやすくなります。
ネクストプレナーズの見解
SSBJ基準は上場会社の制度であり、中小企業が今すぐ基準そのものに対応する必要はないと考えます。一方で、取引先からの問い合わせは、制度の適用時期よりも早く、事業年度の途中に届く場合があります。
よくある誤解は、スコープ3まで一度に精密に算定しようとすることです。まずは自社のスコープ1・2を、請求書をもとに把握することをおすすめします。数字の精度よりも、どの資料から算定したかを説明できる状態にしておくことが、取引先との信頼につながると考えます。
SSBJ基準に関するよくある質問
SSBJ基準はいつから義務になりますか?
平均時価総額3兆円以上のプライム市場上場会社は2027年3月期から、3兆円未満1兆円以上は2028年3月期から義務になります。内閣府令の改正で定められた時期で、いずれも有価証券報告書が対象です。
中小企業もSSBJ基準の対象になりますか?
金融庁の公表資料では、対象はプライム市場上場会社のうち平均時価総額1兆円以上の企業とされており、中小企業は対象として示されていません。取引先の上場会社からデータ提供を求められる可能性はあります。
取引先からCO2排出量の提供を求められたら、何から始めればよいですか?
まず、依頼の目的・対象期間・回答形式を確認してください。そのうえで、電気・ガス・燃料の請求書から使用量を集め、スコープ1・2の算定に必要なデータをそろえます。
SSBJ基準とISSB基準は同じものですか?
同じではありません。SSBJ基準は、ISSBのIFRSサステナビリティ開示基準との整合性を図ることを基礎として開発された日本の基準です。2026年3月13日の改正内容にも、国際基準との関係が反映されています。
スコープ3の数値が正確でないと、上場会社は責任を問われますか?
金融庁は、差異が生じる要因や推論過程などが合理的な範囲で具体的に記載されている場合は、虚偽記載の責任を負わないという考え方を示しています。そのため、上場会社は算定の前提を説明できる資料を求める場合があります。
第三者保証はスコープ3も対象になりますか?
ワーキング・グループの報告書案では、当面の保証範囲は、ガバナンス、リスク管理、スコープ1・2に限定することが適当とされています。スコープ3は義務的な保証の対象に含まれず、事務局資料では、義務的な保証の対象に含まれない情報について受ける保証を「任意保証」と呼んでいます。
監修
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
出典
- 金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について(適用時期・対象企業・二段階開示・スコープ3の考え方)
- 金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施について」(SSBJ基準の告示指定・時価総額の判定方法)
- 金融庁「サステナビリティ開示基準を指定する件」に対するパブリックコメントの実施について(2026年3月13日のSSBJ基準の改正)
- 金融庁 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(第9回)議事録(5,000億円以上1兆円未満の区分・保証の整理)
- 金融庁 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(第11回)議事録(保証の範囲)
- 金融庁「金融審議会『サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ』報告の公表について」
- サステナビリティ基準委員会(SSBJ)「サステナビリティ開示基準」(公表日・改正日)
- サステナビリティ基準委員会(SSBJ)「サステナビリティ開示基準の公表」(3つの基準の構成・ISSBとの整合性)
- 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「Q&A(よくある質問)」(供給先から排出量情報を求められた場合の考え方)
- 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「各種ガイドライン」(1次データを活用した算定ガイド)