スコープ3カテゴリ1の算定方法|購入金額と排出原単位から中小企業が取引先に回答するまでの手順

スコープ3カテゴリ1の算定は、購入した製品・サービスの物量または金額に、品目ごとの排出原単位を掛けて合計します。物量が分かれば物量、金額しか分からなければ金額で計算できます。この記事では、環境省と経済産業省の基本ガイドラインと環境省の排出原単位データベース(Ver.3.6)に基づき、カテゴリ1の対象範囲、原単位の選び方、取引先に回答するまでの6ステップ、仮の数値による計算例を、製造・卸売業の担当者向けに整理します。

スコープ3カテゴリ1の算定は「購入量・購入金額×排出原単位」

スコープ3カテゴリ1とは、自社が購入・取得した製品・サービスについて、資源採取から製造までの段階で出る温室効果ガス排出のことです。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、サプライチェーン排出量を構成する15のカテゴリのうち、カテゴリ1が「購入した製品・サービス」と整理されています。

スコープ3カテゴリ1の算定は、大きく2つの方法があります。ひとつは、サプライヤーごとの排出量を積み上げる方法です。もうひとつは、自社が購入した製品・サービスの物量または金額に、品目ごとの排出原単位を掛ける方法です。サプライヤーから排出量データを入手しにくい中小企業が、取引先への回答のために算定するときは、後者の「購入金額×排出原単位」を使う場面が多くなります。

この記事では、取引先からスコープ3の算定を求められた製造業・卸売業の経理・総務担当者に向けて、カテゴリ1の対象範囲、購入金額と排出原単位から計算する手順、原単位の選び方、回答までの流れを整理します。内容は、環境省と経済産業省の基本ガイドライン(Ver.2.8)、環境省の排出原単位データベース(Ver.3.6)とその解説資料、環境省のQ&Aで確認した範囲に限っています。

取引先から算定を依頼されたときの全体の流れは取引先からCO2排出量の算定を依頼されたらの記事で、スコープ1・2・3の区分はスコープ1・2・3の違いと中小企業が優先すべきGHG算定の進め方の記事で、電気・燃料の計算はCO2排出量の計算方法の記事で説明しています。この記事は、そのうちスコープ3の中でも、仕入・購買に関わるカテゴリ1に絞った内容です。

カテゴリ1は何が対象で、何が対象外か

カテゴリ1の対象範囲

カテゴリ1の対象は、自社が購入・取得した全ての製品とサービスの、資源採取段階から製造段階までの排出です。基本ガイドラインでは、次のものが対象として示されています。

  • 自社が購入・取得した原材料、中間製品、最終製品(仕入れ商品を含む)
  • 自社が購入・取得したソフトウェア等のサービス
  • 製品の製造に直接関係する物品(直接調達)と、直接関係しない物品・サービス(間接調達)の両方

環境省のQ&Aでは、事務用品、ユニフォーム、社員食堂用の食材、クリーニング、修理・修繕、外部のレンタルサーバーの利用なども、カテゴリ1に該当すると説明されています。卸売業が仕入れる商品も対象です。資源採取段階から一次サプライヤーまでの輸送もカテゴリ1に含まれます。

他のカテゴリとの境目

カテゴリ1は、他のカテゴリに含まれるものを除いた購入分です。二重に計上しないよう、次の境目を確認します。

  • 固定資産として扱う設備・機器・建物・車両:カテゴリ2(資本財)です。環境省のQ&Aでは、会計上の取り扱いで判断すると説明されています。
  • 購入した燃料・電気の採取・製造などに係る排出:カテゴリ3です。自社で燃料を燃やす排出はスコープ1、購入した電気の使用はスコープ2にあたります。
  • 一次サプライヤーから自社までの輸送:カテゴリ4です。
  • 事業から出る廃棄物の処理:カテゴリ5です。
  • 従業員の出張:カテゴリ6です。

算定方法は2通り:サプライヤーごとの積み上げと、購入量・金額×排出原単位

カテゴリ1の算定方法は、基本ガイドラインで2つ示されています。どちらも、基本の考え方は「排出量=活動量×排出原単位」です。

  • 算定方法①:自社が購入した製品・サービスに係る資源採取から製造までの排出量を、サプライヤーごとに把握して積み上げます。サプライヤー固有の排出原単位に物量・金額を掛ける場合も含みます。
  • 算定方法②:自社が購入した製品・サービスの物量または金額に、品目ごとの排出原単位(排出原単位データベースなどの2次データ)を掛けます。

基本ガイドラインでは、方法①は算定精度が高くなることが期待される一方で、サプライヤーが排出量を把握できない場合や、データを入手できない場合は算定が難しくなると説明されています。方法②は、自社で把握している物量・金額のデータが使えれば、新たにサプライヤーからデータを取る必要がなく、比較的容易です。この記事で扱うのは、方法②です。

物量と金額、どちらを使うか

活動量には物量と金額の両方が使えます。基本ガイドラインでは、算定精度を考えると物量データが望ましく、物量データが得られない場合は金額データを使えるとされています。素材分野のように受け入れる原材料が多種多様で、価格が世界市場で大きく変動しやすい場合は、基本的に物量ベースが適切と考えられるとも記載されています。

金額で算定する場合の注意点は、環境省のQ&Aにも書かれています。金額による算定は、為替や製品の価値など環境負荷とは別の要因の影響を大きく受けます。そのため、購入物品の軽量化のような削減施策の効果を評価したいときは、重量などの物量を活動量にしたほうがよいと説明されています。一方、サプライチェーン排出量の全体像をつかむことが目的なら、支出額を活動量として推計し、カテゴリごとの傾向を見る使い方で足りると説明されています。

排出原単位とは何か、どのデータベースから選ぶか

排出原単位とは、活動量1単位あたりの温室効果ガス排出量のことです。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、電気1kWhあたりのCO2排出量、貨物1トンキロあたりのCO2排出量などが例として示されています。カテゴリ1の金額ベースの算定では、「購入金額あたりの排出量」が排出原単位になります。環境省のQ&Aには、金額に掛ける原単位の単位を「t-CO2e/百万円」とする例があります。

環境省の排出原単位データベース

環境省は、サプライチェーン排出量の算定に使える排出原単位を「排出原単位データベース」にまとめています。2026年10月時点の最新版はVer.3.6(2026年4月リリース、Excel版)で、使い方を解説した資料も同時に公開されています。算定するときは、古い版の値ではなく、最新版を確認してください。

データベースの原単位は、作り方によって2種類に分けられます。

  • 積み上げベース:ライフサイクルの各段階の投入資源や排出物を詳しく集計した原単位です。精度が高い一方、網羅的な整備が難しく、必要な品目がないことがあります。
  • 産業連関表ベース:産業連関表の分類にもとづき、社会にある全ての財・サービスを網羅した原単位です。必要な原単位を見つけやすい一方、1つの部門に複数の商品が含まれ、平均的な値になるため、詳細な分析は難しくなります。環境省のQ&Aでは、産業連関表ベースの原単位は金額ベースが多いと説明されています。

このほか、データベースの案内ページでは、国内の約5,000種類の製品・サービスの環境負荷情報を持つAIST-IDEAなど、外部のデータベースも紹介されています。AIST-IDEAは購入して利用するデータベースです。

活動量に合う原単位の選び方

排出原単位データベースの解説資料では、把握している活動量が物量か金額かで、使う原単位を選ぶ流れが示されています。物量が分かる品目は、物量に合う積み上げベースまたは産業連関表ベース(物量)の原単位を使います。金額しか分からない品目は、産業連関表ベース(金額)の原単位を使います。

品目にぴったり合う原単位がないとき

自社の品目に完全に一致する原単位がない場合は、日本標準商品分類などを参考に、その品目を含む上位の項目を探し、その項目の原単位を使います。データベースの解説資料には、「ビタミン剤」に一致する原単位がないため、上位分類の「医薬品及び関連製品」にあたる「医薬品」の原単位を使う例が載っています。

生産者価格ベースと購入者価格ベースの使い分け

産業連関表ベースの金額原単位には、生産者価格ベースと購入者価格ベースがあります。環境省のQ&Aでは、使い分けが次のように説明されています。

  • 生産者から直接購入する場合:調達価格に、生産者価格ベースの原単位を掛けます。
  • 商社や小売を介して購入する場合:購入価格に商社・小売のマージンが含まれるため、購入者価格ベースの原単位を掛けます。

消費税と物価上昇の扱い

環境省のQ&Aによると、産業連関表ベースの金額原単位は消費税を含む値で、従来の産連表データベースは2005年表がもとのため、税率は当時の5%です。Q&Aでは、算定の際に5%に換算して算定しても問題なく、関税は含まれないと説明されています。また、金額原単位による算定は排出量が金額に比例するという仮定にもとづくため、単価が上がると排出量も増えます。物価上昇の影響を除きたいときは、デフレーターなどで数値を処理する方法や、物量ベースの算定に切り替える方法があると説明されています。

取引先に回答するまでの6ステップ

ステップ1:提出先の指定を確認する

算定の前に、取引先の依頼内容を確認します。対象期間、算定する範囲、提出の様式、使う排出原単位の指定の有無を聞いておくと、やり直しを減らせます。指定がある場合は、その指定に合わせます。

ステップ2:購入データを集め、カテゴリを仕分ける

対象期間の購買・仕入のデータを、会計システムや購買管理の記録から集めます。品目、取引先、数量、金額、購入ルート(生産者から直接か、商社・小売経由か)が分かる形にします。そのうえで、固定資産の購入はカテゴリ2、燃料・電気はスコープ1・2またはカテゴリ3、運賃はカテゴリ4、廃棄物の処理費はカテゴリ5、出張費はカテゴリ6というように、カテゴリ1から外すものを仕分けます。

ステップ3:算定する品目の優先順位を決める

購入品目が多い場合は、すべてを一度に細かく算定しなくても構いません。環境省のQ&Aでは、Scope3基準が示す優先順位の考え方として、総支出額の80%分にあたる調達品目と、残りの20%のうち個々に総支出額の1%を超える品目を、データ収集の優先対象とする方法が紹介されています。原則としては全ての排出量を算定することが求められる一方、排出量が小さい範囲などを除外する場合は、算定した排出量とあわせて、範囲と除外の理由を開示することが必要です。

ステップ4:品目ごとに排出原単位を選ぶ

排出原単位データベースの最新版(Ver.3.6)から、品目ごとに原単位を探します。物量が分かる主要な原材料は物量ベース、それ以外は金額ベースの産業連関表の原単位、というように、把握できるデータに合わせて選びます。購入ルートに応じて、生産者価格ベースか購入者価格ベースかも確認します。

ステップ5:活動量に原単位を掛けて合計する

品目ごとに「物量または金額×排出原単位」を計算し、全品目を合計します。金額の単位(円か百万円か)と、原単位の単位をそろえてから掛けます。

ステップ6:使った原単位と根拠を記録して回答する

算定した排出量とあわせて、算定の対象期間、含めた範囲と除いた範囲とその理由、使ったデータベースの名称と版、品目ごとの原単位、元データの出どころを残します。取引先から根拠を聞かれたときに説明でき、翌年度に同じ方法で算定を続けるためにも必要です。

計算例:購入金額から排出量を出す

ここでは、計算の考え方を確認するための仮の数値で計算します。排出原単位の値は、説明のために置いた仮のもので、データベースの実際の値ではありません。実際に算定するときは、データベースの最新版から品目ごとの値を探して置き換えてください。

  • 部品A(生産者から直接購入、生産者価格ベースの原単位を使う):120百万円 × 仮の原単位1.5 t-CO2e/百万円 = 180.0 t-CO2e
  • 資材B(商社経由で購入、購入者価格ベースの原単位を使う):50百万円 × 仮の原単位1.0 t-CO2e/百万円 = 50.0 t-CO2e
  • 事務用品など(小売店経由で購入、購入者価格ベースの原単位を使う):2百万円 × 仮の原単位0.5 t-CO2e/百万円 = 1.0 t-CO2e
  • 合計:180.0 + 50.0 + 1.0 = 231.0 t-CO2e

この例では、購入額の合計172百万円のうち、部品Aと資材Bの2品目で170百万円、全体の約99%を占めます。このように支出が特定の品目に集中している場合は、その2品目から物量データの取得や取引先への問い合わせを進めると、算定の精度を効率よく上げられます。

カテゴリ1の算定でつまずきやすい点

  • 他のカテゴリとの二重計上:固定資産、燃料・電気、運賃などをカテゴリ1の購入金額に含めたままにすると、カテゴリ2〜6やスコープ1・2と重なります。
  • 輸送費を切り分けられない:調達金額に輸送費が含まれ、輸送だけを切り出せない場合は、環境省のQ&Aに、輸送段階を含む原単位(国立環境研究所の購入者価格基準のグローバル環境負荷原単位)を使い、カテゴリ1で輸送を含めて算定する方法が示されています。
  • OEM・委託製造の扱い:委託先が原材料を調達して製造している場合は、OEM製品という物品の購入です。自社が原材料を調達して委託先に供給している場合は、原材料という物品と、OEM製造というサービスの購入になります。
  • 海外から調達している品目:環境省のQ&Aでは、データベースの海外の排出原単位の一覧から、適切なデータベースと原単位を選ぶ方法が示されています。
  • 物価や為替の変動:金額ベースの算定では、物価上昇や為替で排出量が増減します。前年との比較で変動の理由を説明できるよう、物価の影響を記録しておきます。
  • データベースの版の違い:版によって原単位の値が変わるため、前年と別の版を使うときは、その旨を記録します。

ネクストプレナーズの見解

カテゴリ1は、最初から全ての品目を細かく算定しようとせず、支出額の大きい上位の品目から始めるのが実務的だと考えます。物量が分かる主要な原材料だけを物量ベースにし、残りは金額ベースで把握して、翌年度以降に少しずつ精度を上げていく進め方をおすすめします。取引先への回答では、排出量の数値の大きさよりも、対象期間、範囲、使った原単位とその版を説明できる状態にしておくことが重要だと考えます。

よくある質問

スコープ3カテゴリ1は、購入金額からどう計算しますか?

購入金額に、品目ごとの排出原単位(資源採取から製造までの排出量を、金額あたりで表した値)を掛けて、全品目を合計します。原単位は、環境省の排出原単位データベースの最新版(Ver.3.6)から探します。購入先が生産者か、商社・小売かによって、生産者価格ベースか購入者価格ベースかを使い分けます。

購入量(物量)と購入金額のどちらで計算すればよいですか?

物量が分かる場合は、物量で計算するほうが望ましいです。環境省の基本ガイドラインでは、算定精度を考えると物量データが望ましく、得られない場合は金額データを使えるとされています。全体像をつかむ目的なら、金額ベースで始めても構いません。

排出原単位は、どこで入手できますか?

環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームの「排出原単位データベース」で、Excel版を入手できます。2026年10月時点の最新版はVer.3.6(2026年4月リリース)です。使い方を解説した資料も、同じページに掲載されています。

自社の品目に合う排出原単位が見つからないときは、どうしますか?

日本標準商品分類などで、その品目を含む上位の項目を探し、その項目の排出原単位を使います。データベースの解説資料には、「ビタミン剤」に合う原単位がないため、上位分類の「医薬品」の原単位を使う例があります。

購入金額は、消費税込みと税抜きのどちらを使いますか?

環境省のQ&Aによると、産業連関表ベースの金額原単位は消費税を含む値です。従来の産連表データベースは税率5%を前提としており、5%に換算して算定しても問題ないと説明されています。取引先が金額の扱いを指定している場合は、その指定に従い、税込・税抜のどちらを使ったかを記録しておきます。

サプライヤーから排出量データをもらう方法とは、どう違いますか?

サプライヤーから排出量データを提供してもらう方法は、取引先ごとの実態を反映できるため、精度が高くなることが期待されます。ただし、サプライヤーがデータを把握していない場合や、入手できない場合は使えません。その場合に、自社の購入量・金額に排出原単位を掛ける方法を使います。環境省は、1次データを活用した算定のガイドも公開しています。

カテゴリ1の算定や取引先への回答の進め方に迷う場合は、ネクストプレナーズのサステナビリティ支援にご相談ください。

監修

仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長

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